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すると、悠謐が目をランランと輝かせた。
「珀千、仕事をするのか」
「はい。仕事ですから。」
「では私は見ていよう。そなたの仕事ぶりを見るのは久しぶりだからな」
ハッハッハと悠謐は声をあげた。
こんな王が他にいるだろうか……?
珀千は呆れ、あくまで丁寧に悠謐をたしなめた。
「陛下もご自分の仕事をなさって下さい。御公務がおありでしょう」
「そなたまで、このいたいけない老人に仕事をしろというのか。公務なら、面倒だから優秀な皇太子に擦り付けてきたわ」
しかし、珀千の忠告は聞き入れてもらえず、悠謐はそう言うや否や、どかっと椅子に座り、顎で珀千の仕事を促してきた。
珀千は軽くため息をついた。
「仕方ありませんね」
珀千は鋏を持ち直し、木を切り始める。
ジャキジャキジャキ、と木を切る軽快な音が辺りに響く。
そして、その傍ら、悠謐は頬杖をつき、珀千の手によって様々に形を変えていく木を優雅に眺めていた。
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