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しかし、さすがに簡単に頷くわけにはいかない。
珀千も負けじと口を開く。
「ですが、何も英華である必要はありません。むしろ、初めての平民妃ならばもっと人選に慎重になるべきです」
珀千は、長らく王宮専属庭師として悠謐に仕えてきたが、ここまでぶっ飛んだことを言われたのは初めてだ。
もはや、慌てている自分が何に慌てているのかさえ分からなくなっていた。
「――珀千」
悠謐の声音が真剣なものに変わった。
瞳もスッと細められる。
「だからこそだ。初めての平民妃であるからには、その者の出自ははっきりとせねばならない。王室との血縁関係を望む者は多いはずだ。そういった者が姜家に入らないようにする為にも、やはり英華嬢に頼むのが一番だ。何しろ、そなたの孫という強力な信頼要素があるからな。……許嫁を定めるのは淞淋の代までだ。それ以降は本人の意思で相手を見つければよい。その頃には私はくたばっておろうぞ」
珀千は小さく、息を飲んだ。
「では、英華に次代の平民妃の為の踏み台になれというのですね」
つまりはそういうことだ。
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