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「やっぱり!」
男は嬉しそうに指をパチンと鳴らすと要に近づき握手を求めた。
「いやー、まさか君みたいな人が飄々高校に入学してくれるとは……、嬉しいかぎりだよ! もちろん野球部に入部してくれるよね?」
「はい、入部させてもらうつもりです」
男のあまりの歓迎っぷりに要は遠慮がちに答えながら握手に応じる。
「えっと、てことは野球部の方ですか?」
「……ふぅー、これで僕は楽できるなー」
「…………」
またまた無視されてしまった要。
「ああ、僕の名前は浅生 太一郎(あそう たいいちろう)。飄々高校の野球部員だよ。
僕も弱小だったけどリトルリーグで野球やっててね、県外遠征や雑誌なんかで衛守くんのこと見たことはあったんだよ」
「あ、それでボクの事をっ。どこかで会ったことあったのかと思って」
要はマイペースな人だなぁと思いながら、握手していた手を離して太一郎の話しに納得した。
「そういう事っ。いやね、小学生、リトルでピッチャーやバッターで有名な選手はいたけど、キャッチャーの能力を注目されて子は珍しくて凄く印象に残ってたんだよ」
スラッガーという言葉があるように、野手で注目される選手は打力に目を向けられることが多い。
それは、打って点を取るというプレーは非常に分かりやすく人の印象に残りやすいからだ。
そんな中で捕手としてのプレーを第一に注目される選手、野手というのはとても稀で、それが小学生での話というのだからおさらであろう。
「中学あたりから噂がぱったり聞こえなくなったけど、どうしてたの?」
「ははっ、まあ、いろいろありまして」
「ふーん。まあ、入部してくれるなら何でもいいよ。うちは部員が少ないからね、君のような人は大歓迎だ!」
一貫して歓迎の姿勢を崩さない太一郎だった。
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