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「……ピッチャー?」
「ん、どうしたんだ……?」
千夏の不意にもらした小さなつぶやき……。げんなり中の好はそのつぶやきに反応した。
「なんか要の昔の話聞いたあたりから様子がおかしいけど、どうしたんだ? 体調でも悪いのか?」
どうやら先ほどから好が静かだったのは、千夏の異変に気付いて気にしていたからだったらしく、それもあってか、好は千夏のつぶやきにもしっかりと反応することができた。
「…………」
千夏は太一郎との会話の間からずっと顔を下に向けたまま黙っており、今も顔色をうかがうことができない状態である。
「保健室でも行くか? まあ、オレ場所は分からないけど」
わっはっはと、好は笑いながら千夏に近づく。
「あ、あのね工口くん!」
「うお、な、何っ?」
慌てた様子で割って入るように好に話しかけた早苗。早苗のその態度を見ても、千夏の様子がおかしいことは一目瞭然だった……。
「…………ぅな………」
また小さく何かをつぶやく千夏。
「ん?」
好は早苗から向き直り、千夏に視線を向ける。
「…な…け……ぅな……っ」
「何だって? 全然聞こえな――」
千夏に向かって手を伸ばしかけた好だったが、その手は伸ばした途中で止まる。
「お前っ」
注意深く見れば千夏の肩が小さく震えていた事に気がついたのだ……。
「私にっ、話しかけるなっっっ!!!!」
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