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具体的な地名は伏せる。あえて言うのであれば、N県某市Oバイパス。地元住民から言
わせれば、政府の無駄公共事業によって生まれた無用の長物。とくに利用者の少ないこのバイパスは、深夜にはほとんど車は通らない。地元の数少ない走り屋たちは、こぞってこのバイパスに集まり、絶好の腕試しの場所として愛用していた。加藤もその一人だ。
バイパスのスタート地点、そこのすぐ側にあるコンビニで加藤は買ったばかりの煙草を開け、一息ふかす。
「ふう、今日こそは最速タイムを叩き出す」
加藤はにやりと煙草片手に、愛車を眺める。こいつとならどこへでも行ける。違う世界を見せてくれる。
「さあ、行こうか」
灰皿に火の消えた煙草を放りこむ。車内へ乗り込み、キーを回す。ブウオンと地鳴りのようなエンジン音。走り出す。コンビニを出た。交差点、信号は赤。止まる。
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