第6話

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 その時、遠くでガラスの割れる音が聞こえ、サクラはその方向を向いた。役場の方だ。  サクラは目を閉じ透視する。すると、5人の狂人に襲われている片山の姿が浮かび上がった。どうやら彼はまだ無事のようだ。  サクラは役場に向かうことを決め、ゆっくり舞い上がる。カメラや人の目がなければ、サクラは空を飛んでいける。 「紫ノ上島・オブ・ザ・デッドか、これ……? ショットガンを持ってくるべきだったかなぁ……」  まだどこか暢気なサクラ。空を飛びながら、サクラは嫌なことに思い当たった。  ……もしかして、あたしたちがあの研究所に入って、ウイルスが外に拡散した……?? 「……………………」  心当たりはある。  部屋に入り、電気をつけたことでこれまで動いていなかった空気循環機が稼働し始めた。あまりに非科学的なので認めたくはないが、もし飛鳥が言うとおり、あの部屋でゾンビ・ウイルスのようなものがあったのだと仮定したなら、サクラたちが電気をつけることでウイルスは通風孔を通じて外に漏れたのかもしれない。実際、あの狂犬のいた部屋には換気装置があったし紫条家東館の庭や中庭を中心に巧妙にカモフラージュされた通風ダクトを見つけている。サクラや、携帯バリアーに<サクラ・キャリー>を持っている飛鳥は強靭な防御能力があるためなんともなかっただけで本当はゾンビ・ウイルスがかなり充満していたのかもしれない。本来ウイルスを扱う施設の換気機器であれば防菌対策はとられているはずだがそれも30年放置されたもの……故障していないと誰がいえるだろう…… 「嘘でしょぉぉぉぉ~」  サクラは間抜けで脱力系の嘆息を零す。  あくまで科学的根拠のない、推測だ。  だがサクラ自身、腹立たしいことに、この推測を否定する材料がなかった。 「これは……ちょっと……まずいな」  たらり…… とサクラは汗をかく。もしこれが事実なら元凶はサクラと飛鳥たちである。  法的にはともかく、この事をユージが知れば……拓がいる以上知られないはずがないが……どれだけ怒られるか……想像するだけでもサクラはアンニュイになった。そんな次元ではないのだが……   ……このまま沖縄本島まで飛んで逃げようか……   と一瞬、本気で考えたサクラだった。  この時、時間は午前1時になろうとしていた。日付的にはついに三日目に突入した事になる。
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