第6話

13/35
前へ
/35ページ
次へ
「ああ、お前と揉め事起こしていたイタリーマフィアに仲介しておいたから、もう武装しなくても街をあるけるぞ。よかったな」  この段階ですでにデービスには拒否権などないではないか。断れば、手打ちは破綻して再びマフィアに狙われる。 「おや? なんだか……もうお前には貸しは返しているのかな?」としらじらしく少し驚いてみせるユージ。もう脅迫以外の何物でもなかった。 「分かった! もういい! 協力するよ! 何をやらせたいんだ」  デービスは泣きそうな顔で頷いた。ユージは今開いているネット画面を指差す。 「ネットでの違法ギャンブルだ。今、特別なイベントがあるだろ? 実は大体の概要はもう知っている。ただ、実際に確認していないから確認したいだけだ。俺がアカウントを取っても、B・メーカーが警戒しちゃどうにもならないし、FBIの規約を通すと面倒でな」 「特別イベント? あのなぁ……捜査官。そんなのどんだけあると思ってるんだ? B・メーカーはイギリスの大手賭けサイトだぜ?」  B・メーカーはイギリスにある、何でも賭けの対象とする大手の総合賭けサイトで、会員は世界中に居り、賭けの内容はスポーツの試合からボジョレーのイギリス到着日、果ては芸能人の離婚時期まで賭けの対象として公開している。ただし実際にクレジットカードで現金の支払いが行われる、公然としたギャンブルには違いなく、米国でも州によっては違法サイトの指定を受けている。 「ヒントをやる。有料、しかも賭けの内容は生き残りゲームだ。期間限定、その割には参加費が高いヤツだ」 「………………」 「まだ分からないか? ゲーム製作は日本の企業だ。殺しのゲーム……」 「おい。ちょっと待てよ、まさかアンタ、『サバイバル・ビレッジ』の事言ってるのか!? あれのどこにアンタみたいな大物が関心持つんだ!?」  デービスは笑えを浮かべ余裕そうに答えたが、彼の中で混乱はさらに深まった。 『サバイバル・ビレッジ』……人工知能の3Dキャラクターたちが、殺人鬼の村から脱出するというもので、期間限定で昨日から明日までの3日間のリアルタイム式生き残りゲームだ。日本のゲーム会社が、人工知能キャラクターにどこまで人間的反応が作れるかどうかという実験をネット上で行っているのだが、B・メーカーはその会社と契約し、賭けの素材として提供しているのだ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加