第6話

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3 午後 23時43分 紫条家本館  島の南のから聞こえた数発の銃声に、全員が窓を開け、身を乗り出した。 「銃声よね、あれ」 「ちょっとどういう事!? <死神>はまだ動かないはずでしょ!?」  田村と宮村がそれぞれ顔を見合わせる。その隣りで涼は黙って音の方角を見つめていた。 「サクラさんたち…… じゃないですよね? 拓さん……これって役場の方から……」 「ああ。片山さんたちだろうな」  拓だけは、すぐに窓から離れた。 「しかし解せません。片山氏は良識ある人。もし十字架を狙って襲われたとしてもあんな連続に発砲したりするものでしょうか?」  篠原が首を傾げる。拓が片山、柴山、大森の三人を任命したのは、それぞれ腕っ節に自信のある人間たちだからだ。柴山は警官で大森は消防隊員だ。片山も護身術の心得はあると言っていた。 「発砲の間隔が短いわね…… 最初一発だけ……そして三発がやや間がややゆっくり、その後間があって連続で二発。……明らかに複数の対象を相手にしているんじゃないかしら?」  河野が推理作家らしい分析を呟く。宮村、篠原がそれに同意する。 「もっとも…… <死神>が動かないというサタンの言葉を信じれば、というのが大前提ですけどね」  と篠原が付け加える。それは誰も否定できない。  その時だ。拓が窓際に戻ってきた。手にはHK G36Cが握られている。 「皆ちょっと離れて。かなり音は煩いから。特に耳のいい涼ちゃんは耳を塞いだ方がいい」 「え? 拓さん、何をするつもりですか?」 「俺は様子を見に行きます」  そういいながら、拓はHK G36Cの銃口を空に向けた。 「何する気? 捜査官」 「これはサクラを呼び出すためです。気付いてくれればいいんだけど」  そういうと拓は全員を窓から離れさせ、十分全員が離れたのを確認し、空に向かってHK G36Cのフルオート・モードでトリガーを引いた。  自動小銃も、フルオートでトリガー引きっぱなしであればあっという間だ。元々残り弾も少なかった。僅か3秒ちょっとでマガジンは空になった。 「思った以上に残っていなかったな。20発あったかなかったか」  拓はそう呟きマガジンを外し、黙って銃を涼に渡した。  他の皆は拓の説明を黙って待っている。
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