第6話

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「今のはサクラへの緊急合図です。もしあいつが聞いていれば、俺に異常が起きたことを知るはずです」 「ごめん、捜査官。ちょっとお話が見えないわ?」と田村。 「皆は不快に思うかもしれませんが、事実としてこの島で俺の次に戦闘力があるのはサクラです。サクラは<死神>を倒しているし、銃も奪って持っているでしょう」  まさか元々違法に銃を持ち込んでいるとは言えない。 「今<死神>を除いて自動小銃を持っているのは俺だけです。それはサクラも分かっている。だから、俺は今自動小銃を一斉に使い切りました。俺はプロです。自動小銃っていうのは今みたいに一斉射撃で使うものじゃないんです。その事をサクラは知っています」 「なんとなく分かりましたよ捜査官。つまり片山氏の銃声と意味合いは同じというワケですね。どちらも意図と行動原理は違いますが、<非常事態>を知らせる手段となる」 「うん。篠原君の言うとおりだ。自動小銃のライフル弾の音量は140から160デジベル。人間の声はせいぜい90デジベル。音は銃声が一番大きいので……これがサクラに対するメッセージに最良です」  そう答えつつ、拓はショルダーホルスターに納まったガバメントを取り出し確認する。 「一時間以内に戻ります。もしサクラが現れたら、その時はサクラの指示に従って下さい。あいつの父親はFBI捜査官ですし、あいつ自身FBIや政府に知人も多いのでうまく対処してくれます。万が一俺が死んだ場合も同様に。それまでは、現時点では田村さんにまとめ役をお願いします」 「わかったわ」  どうして拓がそこまでサクラを立てるのか理解はできなかったが、一応サクラの父親がFBIという事、銃を持っている事、扱えるということでとりあえず納得した。 「非常事態が起きたらウインチェスターを乱射して下さい。ただし<死神>が現れても防衛以外では絶対こちらから攻撃しないように」  拓は大人陣は交代で見回りを。宮村と涼には三上の容態をみるよう指示し、廊下に出た。それを涼と宮村がまた飛び出しついてくる。 「さすがに今回はついてきちゃダメだ! 二人とも、分かるだろ?」 「いや……そうじゃなくて…… この銃、どうして拓さん持っていかないんですか?」  涼の腕の中にはマガジンのないHK G36Cがある。確かにさっき弾は撃ちつくしたが、サクラが調達した新しいマガジンがあるのを涼と宮村は知っている。
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