第6話

5/35
前へ
/35ページ
次へ
「あの生還者ルールは俺たちの仲を乱すため作られたルールだ。俺がいなくなることで、箍が外れてその事が表面化するかもしれない。そうなった時はどうなるか分からない。あの部屋には、ウインチェスターライフルが二丁あるだろ? あのライフルを、いつ誰が手に取り凶行に出るか…… 危険の可能性は否定できないと思うんだ。その時涼ちゃんが持っているこの自動小銃は、あの中で唯一ライフルに勝る火力だ」  あの部屋には2丁のウインチェスターがあり、今は一応篠原と三浦が持っているが、二人とも壁に立掛けたりテーブルに置きっぱなしにしたりでいつでも他の人間が手に取ることが出来る状態だ。 「でも、弾は隠しておくんですよね?」 「うん」 「それは分かるわ♪ 心理戦……そういう事でしょ? 捜査官。一種の牽制ね♪」  宮村の答えに拓は苦笑し頷いた。  皆、涼が拓のパートナーとして行動していることは知っている。マガジンがなくても、拓から渡されているかもしれない。(事実渡しているわけだが)もし悪意をもった人間が銃を欲しがるような行動を取れば、それは離反のフラグになるだろう。 「だから宮村さんにはそのあたりのことや涼ちゃんの安全を見ていて欲しい。今怖いのは仲間割れだからね」 「了解したわ」  宮村は頷き、ポンと力強く涼の肩を叩いた。彼女はやはり自信家だけあって、何かしら責任のある役目があると活き活きとなるようだ。拓は時計を確認し、「1時間以内だから」ともう一度念を押すと、外に飛び出し、すぐに森の闇の中に消えていった。 「………………」  空に木霊する銃声…… その音に、サクラは顔を上げた。  隣りで毛布に包まり鼾をかいている飛鳥を一瞥し、腕時計を見た。拓との合流時間までまだ2時間ある。だが、今聞こえたフルオートの銃声は恐らく拓のメッセージだ。 「おい、飛鳥~」  と声をかけたが、飛鳥は完全に熟睡モードで起きる様子がない。どこでもいつでも入眠ができるのは飛鳥の特技の一つだ。  サクラは静かに目を閉じる。イメージを広げていく。 そのイメージは紫条家の地下を走り、やがて一つの鉄扉の部屋……そしてその奥に待機する3人の<死神>たち。  ……<死神>は動いてないな……  すでに日付が変わっているが、<死神>たちも動く様子はない…… 「ちょっと行ってくるか」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加