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「アンタはまとも!? にぃ……人間っ!!?」
「よく分かりませんけど、どうかしたんですか?」
「アッ、アンタはここでナニしてんのよ!?」
「ボク? ああ、十字架探しですけど?」
「誰かが追ってくる!! ここ開けてぇ!! 早くッ!!」
そういうと樺山は、扉を壊さんばかりに激しく西館の玄関を叩いた。その狼狽ぶりに、村田も驚く。
「ちょっと樺山さん。何暴れてるんですか? 貴方のほうがよほど不気味ですよ」
「アホっ!! ンな事いうてる場合ちがうわ! いいからここ開けてよ!!」
「ボクにはむしろ今の貴方の方が怖いんですけど…… どうしたんですか?」
村田は村田で樺山の態度に不審さを感じていて、とても下にいき玄関の鍵を開けようという気にはなれない。
「あ……」
その時だった。藪の中から人影が浮かび上がる。
「誰だ?」
その村田の呟きを聞いた樺山は、素っ頓狂な悲鳴をあげ、さらに激しく玄関を叩き泣き叫んだ。
「化け物ぉぉぉーーっ!! 開けろ!!! 開けて、早くぅっ!! まだ死にたくないぃ!」
「……………………」
藪の中の人影が動いた。
「その話……」
やがてその人影は森の茂みの中から抜け、姿を現した。それを見た瞬間、樺山はその場にへたりこみ、ゆっくりと涙を拭いた。
そこにいたのは、拓だった。
拓はガバメントの銃口を下ろしホルスターに戻すと、ゆっくりと樺山の方に向かいながら言った。
「樺山さん。今の言葉、どういう事ですか?」
「ナ……ナカムラ捜査官ぅぅ」
「貴方は冷静そうですね」
村田は苦笑すると、窓の傍から消えた。玄関の鍵を開けにいったのだ。
拓がやってくると、樺山は這うように進み、拓に抱きつくと号泣した。拓はそれを優しく受け止める。
「大丈夫。誰もこの付近にはいないよ。俺の音で怖がらせたみたいだ。ごめん」
拓はカメラを警戒し、わざと森の中を進んでいたのだ。サクラほどではないが、拓も経験と訓練によって夜目は常人より遙かに優れている。昼間、森の様子は確認しているし、月がこれほど明るければ行動には支障ない。
「何があったんですか、樺山さん。その様子、只事じゃないみたいですけど」
「助かった…助かったぁぁぁぁっっ!!」
樺山は安堵のため泣き崩れてしまい、とても話ができる様子ではなかった。そこに村田が現れる。村田は、とりあえず西館の中に二人を招いた。
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