第6話

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「君は一人か? 他にこの館には?」  樺山を支えながら拓は村田を見て言った。村田は苦笑しながら頷く。 「ボクはあんまり大勢でゾロゾロっていうのは好きじゃないんで。ああ、でも今はそんなこと言ってる状況じゃないですけどね」 「俺たちは紫条家本館に集まってます」 「ああ、じゃあボクも合流してもいいですか?」  無邪気に村田は答える。どうも彼の性格なのか、えらく明るい。が、考えてみれば村田は21歳という若さでサクラたちが突破してきた難問クイズをクリアーしてきた頭脳派だ。宮村、篠原がそれぞれ年齢に見合わない個性を持っていることを思うと、この青年も一癖あるだろう。 「今は紫条家本館の方もピリピリしてる。行くんなら俺と一緒に」 「捜査官は………… ボクたちと偶然って事はなさそうだから、さっきの銃声の捜査ってところですか?」 「ああ。そんなところ」 「なら丁度いい。ボクも、まだここで遣り残していることがありますから」 「?」 「これですよ」  村田は微笑を浮かべ、ポケットから十字架を見せた。十字架は三つだ。 「ここでコレを探していたところなんです。最初は東館に居ましたけど、あそこは<こんぴら>の二人が牛耳っているし、ASの二人が漁ったみたいで宝箱は見つからないし。それでこの西館に来て探してたんです」 「こんな時に君は……」 「別に間違ってないでしょ? ボクは生き残りたいし。捜査官や他の皆は違うんですか? ま、どっちにしてもこれはボクの判断で勝手にやってることですから」 「………………」 「そんな顔しないで下さいよ。別に普通でしょ? 大丈夫、本館に招いてくれるならボクだって勝手な行動はしません。この十字架は渡しませんけどね」  拓は苦い顔で頷いた。それは強制する権利はない。 「分かった。君の意見はともかく、まずは彼女を落ち着かせたい。水を一杯、頼めるかな?」 「いいですよ」  村田は頷き、部屋を出て行く。  拓は涙を拭う樺山に、もう一度何があったのか尋ねた。  樺山は顔を上げる。思い出した瞬間、再び激しい震えを起こす。よほど怖い目にあったんだろう。拓はすぐに「もういいよ」と彼女を止めた。再び顔をくしゃくしゃにして下を向く。拓はそんな彼女の頭を優しく撫でた。
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