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「俺は神埼和正、よろしく頼むわ」
ニヒルに笑い、席をたつ。真耶から部屋の鍵を受け取り赤い廊下の向こうに消えた。
雨のごとく流れるシャワーを止め、髪を後ろに書き上げる。はぁ、と息を吐きゆっくりと目を開く。
紅い瞳に金色の髪。彼女ーーーーーーハーヴェスト・イェンツィアの眼光はナイフのように鋭い。
「そんな......まさか......でも」
今日出会った男ーーーーーー和正に見覚えがあった。
自分の所属していた基地が何者かに襲われる事件があった。幸い敵はISを使えない奴らだったが、こちらは甚大な被害を受け、私は消えない傷を背負うはめになる。
テロリストのリーダー......自分を落とした男は、あんな顔だった。ふつふつと腹の底から黒い感情が溢れ出す。
私は生き残った。だが、死んだ者もいる。
「何故だッ!何故今ごろになって現れた!」
曇ったガラスを力一杯殴り、嗚咽を漏らす。
翼を失った自分がもう一度羽ばたく翼を手にいれたのに。
彼はまた壊しに来たのだろうか、いや、そうに決まっている。
唇から生暖かい液体があふれだす。無意識のうちに噛んでいたようだ。錆び鉄の味のする血を吐き出し、まともに体も拭かずにベッドに倒れこむ。
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