第1話

3/6
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
教室にたどり着き、愚弟を叩き、全員の自己紹介が終わった。 アイツを除いて。 呑気に口笛を吹きながら油を売る男。神埼和正は、ポケットからタバコを取りだしひをつける。 紫煙を吐き出し、首を傾げる。 「ここ、どこだ?」 窓から見えるのはグラウンドのような場所。途方に暮れていると、コツコツの靴裏が床を叩く音が聞こえた。誰か来るようだ。 来た奴に聞けばいいか。振り向き、足音の主に向き直る。 刹那、突き刺さる人差し指と中指。眼を押さえて床で悶える。 「ぐぁぁぁぁぁあああああ!!目がぁ!!目がぁ!!」 霞む視界を凝らすと、キラキラと輝く金髪が目に入った。 腰に手をあて、仁王立ちするのは一人の美少女............の年齢を過ぎた美女だ。 彫りの深い顔、キリッとつり上がった瞳と眉毛。紅色の目には落胆の色が浮かんでいる。 「早く来てください。すでにHRは終わっていますので」 襟首を捕まれ、冷凍マグロのごとく引きずられてゆく。 授業中の教室にほうりこまれ千冬と言葉を交わしさって行く女性。クラスメイト全員のいぶかしむ目線をその背に受け、冷や汗を垂らす和正。 (オイオイ、どーすんだよ.......絞り出せ俺!37年間費やしてきた俺の頭ァァァァ!!)
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!