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教室にたどり着き、愚弟を叩き、全員の自己紹介が終わった。
アイツを除いて。
呑気に口笛を吹きながら油を売る男。神埼和正は、ポケットからタバコを取りだしひをつける。
紫煙を吐き出し、首を傾げる。
「ここ、どこだ?」
窓から見えるのはグラウンドのような場所。途方に暮れていると、コツコツの靴裏が床を叩く音が聞こえた。誰か来るようだ。
来た奴に聞けばいいか。振り向き、足音の主に向き直る。
刹那、突き刺さる人差し指と中指。眼を押さえて床で悶える。
「ぐぁぁぁぁぁあああああ!!目がぁ!!目がぁ!!」
霞む視界を凝らすと、キラキラと輝く金髪が目に入った。
腰に手をあて、仁王立ちするのは一人の美少女............の年齢を過ぎた美女だ。
彫りの深い顔、キリッとつり上がった瞳と眉毛。紅色の目には落胆の色が浮かんでいる。
「早く来てください。すでにHRは終わっていますので」
襟首を捕まれ、冷凍マグロのごとく引きずられてゆく。
授業中の教室にほうりこまれ千冬と言葉を交わしさって行く女性。クラスメイト全員のいぶかしむ目線をその背に受け、冷や汗を垂らす和正。
(オイオイ、どーすんだよ.......絞り出せ俺!37年間費やしてきた俺の頭ァァァァ!!)
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