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翌日の放課後は剣道部に行くことはなかった。江崎も誘おうか誘わまいかのところで、果たして誘わなかった。そそくさと教室を出る清照。
その日は師範との稽古であった。いつものように着替えて相手をしてもらっていると、急に師範が手を止めた。そして「うむ……座ろうか……。」と言い正座をするので、清照もそれに倣う。
「清照……お前さん、ちょっと様子が変だったぞ……すり足の幅が若干広かった……。」
「え?」と言いたげな表情を浮かべるが、すぐに戻る。極僅か、おそらくほんの数ミリというレベルで違っていたのだろう。
師範に指摘されるも「特に……ちょっと怪我を……しただけです……。」と言い返した。しかし自身は気づいていた。正しいであろう推測の矛先は剣道に向いていた。
防具を着けていたということ。いつもは道着だけなのに重荷を付けたことが歩幅を狂わす原因となっていたのだ。
それをわかっていながらも、清照は口をきつく結んでいた。思案顔でいると、師範が、「嘘を付いているな……何をしておった?」と問い詰めてくる。
「……け……剣道です……。友達に……誘われて……。」
「愚か者!剣道などするでない!いくら友達に誘われようとも、強引であろうとも、わしらは半分は竹刀を置いたも同然じゃ。絶対にするでない。いいか!」
いよいよ嘘がつけず腹をくくって真実を口にしたが、師範が鬼の形相でするなと怒鳴ってきた。動揺しながらも、首を縦に振るほかなかった。
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