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その日以来、剣道には見向きもしなかった。自然と放課後、教室から出るのも足早となっていた。
そんなある時、凪紗が話しかけてきた。体験入部であちらこちら行っているため、一緒に変えることもなく、話す機会が減っている。清照は顔の向きが少しが上がった。
「ねえ、キヨ。部活は入らないの?あたしは半分ぐらい決まってるけど、まだ悩んでるのよね……。」
「そうなんだ……。僕は……入らないよ……勉強を真面目にするから……。」
「そっか……。それじゃあまたね、あたしは部活があるからっ。」
それだけ言って体育着を持って凪紗は教室を出た。少し呆けていると、肩を叩かれた。振り返ると見知った顔だった。
「なあ、今日ももう一度だけ来てくれないか?最終日間近だしいいだろ?頼むよ……。」
そう言いながら手を思い切り掴んで引っ張り出す江崎、清照はまた言い出せずに身を任せてそのまま進んでいた。
予想通りに来た場所は剣道場である。中では既に打ち合い稽古が始まっていたが、入るとすぐにそれは止まった。
「千葉先輩!尾田を連れてきましたよ!あ、ほら、入って。」
少し敬遠していた剣道部にもう一度足を踏み入れてしまったが、清照は深く後悔しているわけじゃなかった。
眼鏡をかけた先輩が手招きをするので、近づくと、廊下へと連れられた。二人きりになり、タブレット端末を出して一つの動画を再生し始めた。
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