第二幕

4/6
前へ
/26ページ
次へ
 「これはこの間の君を撮影したものだよ。部長の宮崎が君と会っていたようでね。念のため、実力を見せてもらうがてら録画させてもらったよ。」  先輩が話しているのを聞きながら、清照は画面を見つめていた。そこには自分の姿があり、自分が防具をつけて剣術をしていた。紛う事なき剣術であり、それは剣道ではない。  自分の構え方、振り方、癖、全てが客観的に見えている。自分がいつも見ている師範に教えてもらったことをそのままやっていた。自分の姿に驚いていると、千葉が口を開いた。  「君の間合いの詰め方はすごい、目を惹くよ。おそらくで俺だったら避けられない太刀捌きも、一瞬で返しているだろう?それは空間を把握する能力に長けているということだ。並大抵の人じゃ習得は不可能といっても過言ではないよ。」  自分がこんなにも人違うことをしている。そして千葉が言ったことを意識して見ていると数秒後には映像が終わってしまった。まだ言葉は続いている。  「それに竹刀の慣れ方も並の人じゃできないよ。そう、武道としての剣道の利点。心技体を鍛えて一つにするんだ。そして、そこから放たれる打突は決まればとても気持ちがいい。」  「…………。」  「君の竹刀の捌き方はそう容易くモノにはできない。その変わった剣術で養われた空間を把握する能力も素晴らしい。君の剣道を見てみたい。いいか?剣道をすることは暴力ではなく自分自身を――」  「――もうやめてくださいっ!僕は……暴力が……嫌いなんですよ……。」  千葉が覇気のある声にたじろぎ、動揺していた。清照は逃げるように走ってその場を去る。誰かに追いかけられることもなく、廊下をただ走り続けた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加