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4月、清照は綺麗な制服に身を包み校門の前に立っていた。物憂げな表情で“凛城高校入学式”と書かれた看板を見つめている。一歩踏み出そうか迷っている時、後ろから声を掛けられた。
「何をしてるの?早く行くわよ?」
「何をって……もう高校生になるんだなって思ってさ……。」
清照は女の子に裾を引っ張られながら歩き始める。目を輝かせながら清照に一方的に話し始める少女と共に教室へ着いた。黒板に貼られた座席表を見て、清照は少女の隣であることに安堵する。
「キヨ、なんか段々緊張してきたけど、ワクワクしてくるね。」
「そうだね。ナギは何かやりたい部活とかあるの?」
ガラガラっとドアが開き先生が入ってくる。そこで凪紗と清照の会話は中断された。廊下に出て空を見上げると少し雲が陰っていた。
新入生入場まで割とざわついていて、周りは新しい友達を作らんと話かけたり、それが盛り上がったりしていた。凪紗も積極的に話しかけては打ち解けていったが、清照はうつむくばかりである。
再び教室へ戻ると少し賑やかになっていた。互いに打ち解け合っているからか、話がよく弾んでいるのである。自己紹介が始まると外から鳥のさえずる声が聞こえるようになった。
「それじゃあ次の人、お願いします。」
先生がそう言うと拍手が沸き起こる。再び静まり返ると、緊張しながらも口を開いた。
「ひ、東中学校出身、お、尾田清照です……。よろしくお願いします。」
もう一度拍手が沸き起こるとため息混じりに自席へ戻った。必要最小限しか言わず、かつ全員に聞こえるような声ではなかった。清照は何か悪口が聞こえたような気がして、また表情が陰った。
他の人の自己紹介中に前の席の人がこちらに向いて、話しかけてきた。短髪で少し茶色が混じっているように見える、随分と幼い顔立ちだが誰とでも仲良しの雰囲気がよく伝わってくる。
「尾田くん!入学おめでとう!さっきも話したけどオレは江崎大河ってんだ。よろしくな。」
「江崎くん……よろしく……。」
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