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制服の男は言葉を無視し、木刀を振ってくる。清照は構え直し、木の棒で捌いていった。男の振り方はまさしく剣道であった。何度も振ってくるたびに捌き、身をよじって避けていく。
「おい、真面目にやれ!お前も剣道をやっていたんだろ!?」
「…………。け……剣道なんて……やったこと……ありません……。」
「嘘を吐くんじゃあない!その足捌きはじゃあなんだ?剣道だろうが!」
「剣道なんて……暴力です……。」
男は舌打ちをすると木刀を竹刀袋にしまった。バッグを拾い上げると「お前も凛城の生徒なんだろ?部活勧誘と体験入部はもう始まっている。」とだけ言い、その場を立ち去った。
一人取り残された清照はバッグを拾い上げてさっさと逃げるように帰路に戻った。藪から棒に棒を投げ捨てるとそこは先程までの喧騒がなくなっていた。
翌日、男の一件をネックに感じながらも清照は自席に座っていた。今日も一日HRだということに救いを感じていると江崎がこちらを向いてきた。
「なあ、昨日は体験入部行ったか?」と聞いてくるので首を横に振る。すると「なあ、今日の体験入部、お前も一緒に来いよ!剣道部ってのがあって、昨日行ったらすげえかっこよかったのよ。構えと振り方だけ教えてもらってきたぜ!」と言葉を続けた。
「僕は……いいよ……。」と言ったのだが、先生が入ってきたことにより、彼にまでは届かなかったようである。
校内の見学や図書の利用について、明日からの授業など様々な話を受けた。そして、四限、体育館にて部活動紹介が行われた。
文化部から、運動部からというわけではなく、混ぜられたようにして行われている。そして道着を身につけた中に見知った顔がいるとわかって目を伏せたが、それはやがて始まった。
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