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「こんにちわ!私たちは剣道部です!」と澄んだ声が響き渡ると4人の部員が打ち合いを始めた。最初は面打ち稽古である。清眼の構えをすると摺り足で勢いよく間合いを詰め面を打つ。
バシン!バシン!と館内に響き渡る。説明が進むと胴打ちが始まった。一見片手胴に見えなくもないが、両手で打っている。しかし、素早く片手で相手を抜き去る動作が、片手を想像させるのだろう。
冷ややかな目で清照が見ていると江崎が「おい、カッコイイよな。あ、ほらっ!面がああやって打ち込まれる瞬間とかしびれるよな……。」と楽しげに話しかけてくる。
「以上で剣道部を終わります。昨日から体験入部はあります。見るだけでもいいので是非立ち寄ってみてください。ありがとうございました。」
また響き渡ると剣道部員たちは立ち去った。江崎が「今日一緒に行こうぜ。」と隣で連呼しているが、清照はそれを無視するようにどこかを見ていた。
タンクトップに短パンが数人、ジャージとパーカーが数人とそれぞれがハードルを担いで、セットが終わった。
陸上部が話し始めると、近くにいた凪紗が目を光らせて見ていた。特に聞き入っていたのは長距離走である。
中学の時まで病弱だった彼女だったが、今やそれも随分良くなり、運動も並に、あるいはそれ以上にできるようにはなっていた。溌剌とした表情で見ていて、「ナギもやりたいことがあるのか……。」と思ってしまったのである。
放課後になり、清照は帰ろうとしていたところを江崎に捕まえられた。そしてそのまま、剣道場に連れて行かれてしまったのである。されるがままに着いていくと、道着を身に纏う先輩たちが既に竹刀を持って集まっていた。
帰りたかったのだが、「ごめん!ホントごめん!どうしても一緒に来て欲しいんだよ。」と懇願されたために、仕方なく足を踏み入れた。
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