第一章

7/7
前へ
/26ページ
次へ
 右足が前で左足とは拳二個分ほど空き、随分と楽そうな姿勢で竹刀を構える江崎に対し、左足が前に出て、竹刀が江崎とは逆方向に向き、左肩に対して重心を下げる、まるで剣を使うゲームのような構え方を清照はしていた。  「おい、なんだよその変な構え方。剣道はこうだぜ?」  「僕は……剣道なんてやったことないし……とりあえず僕に竹刀振ってみてよ……。」  「おう、いいぜ。そらっ!」  江崎は誘われるがままに清照に振りかかった。しかし、身をよじって避ける。何度も当てようと振っていくも、剣先で捌かれたり、立ち回りで避けられたりしていた。  しばらくそんな状態が続いてると、江崎が少しむすっとしたような声を上げた。  「なあ、尾田。俺達は剣道やってるんだぜ?侍ごっこみたいなやつだけどさ、お前も打ってこいよ。ちょっとそれじゃあつまらねえぜ?」  「剣道なんて……ただの暴力だよ……嫌だよ……僕はやりたくないよ……。」
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加