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「今日は、少し面倒なものみたいなんだけれど……」
「大丈夫ですよ。お任せください」
「そう言って頂けると本当にありがたいわ。いつもありがとう」
「いえ。それで、お品物の方は?」
「えぇ……これ、なんですけどね。いわくつきらしくて」
「なるほど。少し見てみますね」
そう言うと店主は、女性から木の箱を受け取ると奥へ入っていった。
僕は女性と目が合ったので会釈をすると、なぜか不思議そうな顔をされた。
僕が首を傾げれば、女性の方が口を開いた。
「初めまして。このお店でこんな若い子を見るのは初めてかもしれないわ。もしかしてバイト君?」
「い、いえ。僕は今日初めてここに来たんです。このお店が目に付いたので、入ってみたって感じで」
「あら、そうなの。何かお困りごとでもおあり?」
「え?」
「あぁ、無いようならごめんなさいね。そんな気がしただけだから」
気にしないで、と女性は笑ったが、僕は内心ドキッとしていた。
実は最近、失くし物をしたのだ。毎日探してはいるのだが、いまだに見つかってはいない。
それを見抜かれたような気がしたのだ。
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