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たーPといえば、知る人ぞ知るピコピコ音の名手(代表曲はlove.GAME、sm10198859)。
でも筆者は敢えてこっちのノスタルジックなバラードを推薦しようと思います。
この曲はタイトルに夏、という単語が入っているにも関わらず舞台は夏ではありません。
光文社のカッパブックスから出ている多湖輝著「頭の体操」の一つに「夏以外の季節には簡単にできるのに夏には絶対出来ないことがある。それは何か」という問題がありましたが、その解答例は「早く夏が来ないかなと思うこと」というもの。
前のページで引用した「夏になればまた会える」という言葉に代表されるように、主題は夏の回想です。
曲の最後で別れを告げる「夏風」、思い出の中にいる「君」、これらは一体何なのか、という問いはこの歌詞の解釈から切り離せません。
一番素直な解釈は、今はもういなくなってしまった幼なじみでしょうか。そしてその子の幽霊は、夏の間にしか此岸にいられない。これをお盆と重ね合わせるのが吟味のポイント。動画に使われているミク(?)の服を見る限り、「君」は向こう側の住人なのだと簡単に解釈されますね。
この歌からはたーPの代名詞とも言うべき電子音が排除されていますが、逆に打楽器が効果的に使用されることでいつもの軽快さを失わずにいます。
ところがこの「軽快さ」というのがポイントで、夏の間しか会えない「君」の姿がもう見えなくないことを悲しむ、あるいは後悔することが主題のはずなのに、風が吹き抜けていくような爽快感さえ伴うのが少し不思議に見えます。
でも言い換えれば、夏は必ず再びやってくる、だから必ず毎年会うことが出来る。だから悲しむのは今の一瞬だけで、「またね」という言葉でもって今年の夏=君に別れを告げ、来年にまた思いをはせる。
こういうイメージがこの一曲の中に集約されているわけです。
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