第一章

2/13
前へ
/357ページ
次へ
塔の長い螺旋状の廊下をゆっくり歩く。 目指すは最上階の会議室。 といってもこの塔は3階建てなので最上階というほど高くないが。 1階はエントランス、2階は資料室となっているこの塔は合わせて2部屋しかない。 1階にも2階にも人気はないが3階には数人の気配がする。 生まれつき魔力に敏感な人がいて、〔魔眼〕と呼ばれているこの能力は属性や集団の場合は数がわかる。 この能力は生まれつき限定で、それを持たない人が訓練しても気配を読むことができるようになるだけだから数はわかっても属性まではわからない。 そのため持ってる者はごくわずかである。 僕、クロウリエルはそのわずかなうちの一人だ。 フード付きの白いマントをはおり、フードをかぶることで相手からは口しか見えなくさせる。 そしてそれを着ていると、マントに編み込まれた魔法の効果により声が変わり、マントの中の気温が一定になる。 こうして素性を隠す暗黙のルールが会議室にある。 その理由は――… ガチャッ 「あ、帝王様。お早いご到着ですね。」 そう、僕はこの世界で一番の権力を持つ"帝王"だからだ。 今、会議室から出てきた人は青いマントをはおり、同じように口しか見えない。 彼は水帝。 水属性を得意とすることしか知らないが、彼が帝ということは世界一の水使いなのだろう。 「朝の予定が早く終わったので、のんびりしながら来ましたが…やはり、少々早かったようですね。」 僕は、黄色のマントと紺のマント、黒のマントをそれぞれ着た3人しかいない会議室を見ながら言った。 それを聞いた水帝はあわてて 「いっいえ、皆さんそろそろ来るはずですから。僕、炎帝を迎えに行ってきます!!」 そう言って、転移していった。 そういえば、水帝と炎帝は仲が良い。 ということは、水帝は炎帝の素性を知っているのだろう。 まぁ、会議室じゃなければ素性をさらそうが好きにしてかまわないが。 外で帝として動く時もこうしなきゃならないという決まりは初代帝王、この帝制度をつくった人が決めたらしいが、会議室でこうなのはずっと後の代の警戒心が強すぎる帝王がつくったらしい。 仮にも仲間である帝達に警戒するとかどんだけだよ…… ちなみに、帝王や帝を決めるのは初代帝王が創った"ヤハノダ"というオーブだ。 オーブに呼ばれてこの塔にやってきてオーブから任命をうけ、異空間からでてきた帝の証拠を示すマントを貰うという仕組みだ。
/357ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加