隣に立つのは俺だけ

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「スカートの丈が短い」 初めての休日デートの当日、言われた言葉がそれだ。 「髪飾り可愛いすぎ、白ワンピース1枚とか肌出し過ぎ」 そう、今の俺の格好は焦げ茶ロングウィッグに花がついた金色のカチューシャ、肩が大胆に出ている白ワンピースだ。 「だって…陸奥先輩に喜んでもらいたくて」 「俺は嬉しいけど周りの男の目も考えてよね。遥、服屋行こう」 「え、今日は遊園地じゃ…」 「そんなの後」 俺は陸奥先輩に手を引かれ、ショッピングモールに入る。 女物の服屋に入ると、陸奥先輩は淡いピンクのカーディガンを買っていた。 「先輩、誰かにあげるんですか?」 女物なんて、彼女の方がやっぱりいいに決まってるよな… 思わず泣きそうになる 「これ着ろ、他のやつに見せたくない」 え、それって嫉妬と独占欲ってやつですか? 俺はそれだけで嬉しい。 「ありがとうございます」 いつもなら放課後俺は本来の、男の格好でデートだが、今日は先輩に内緒で女装してみた。 姉に相談したら、任せろ!って全てプロデュースされ、今現在の格好に至る。 その出来栄えは見事なものだ。 先輩との待ち合わせに行く途中、何度もナンパに会った程なのだから。 それを言ったら先輩はどうするかな? 「これから遊園地に行くか」 「はい先輩。手、握ったままがいいです」 「仰せのままに」 周りのみんながこちらを二度見する。 それだけ先輩がカッコいいということだ。 その隣に立てるのは今までも、これからも俺だけであって欲しい。
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