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俺たちには越えられない壁がある。
幼馴染で親友という壁が
「いつも悪いわねぇ、春久のこと頼むわ」
そう俺に言うのは幼馴染兼親友の春久の母親だ。
「いえいえ、お構いなく」
階段を登って春久の部屋へと勝手に入る。
「おーい、起きろ!遅刻するぞ」
「あと5分…」
こうして春久の寝顔を見れるのは俺の特権だと思う。
サラサラの茶色い髪に長い睫毛に目を開くとぱっちりとした黒目。
願わくば、ずっと見ていたい。こいつの隣で。
「お前の5分は俺の何分だ?おら、起きろ!」
無理矢理布団を引っ張る。
「諒のケチー、おたんこなすー!」
「お前は感謝という言葉を覚えろ」
「俺の睡眠を妨害しやがってー!このこのー!」
と言いながら、俺に頭突きを繰り出してくるこいつを可愛いと思うのは俺が末期だからか?
「早くしないと朝飯も食べれないぞ」
「うわっ本当だ!もっと早く起こしてくれても良いのに…」
「起こしたが起きなかったのはどこのどいつだ?」
「知りませーん!」
そう言い、パジャマを脱ぎ出す。
この時間は俺にとっては苦痛で仕方がない。
「ネクタイ結んでー」
「お前にもう何回も教えただろ、ほら、こっち来い」
春久のネクタイを結ぶ。
この近くて遠い距離感。
俺のこの感情に気づいたらお前は俺をどう思うか。
気持ち悪い、と離れていくのか
それが怖くて、この一歩を踏み出せずにいる俺は臆病ものだ。
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