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放課後、俺は先に帰ると春久に言ったが、やっぱり待つことにした。
すると必然的にあいつの告白現場を目撃する訳であって、
「あ、あのっ、春久くんのことがすきですっ!…私じゃ駄目ですか?」
聞こえた。
モヤモヤ、この感情に支配される。
「ごめん、俺大事なやつがいるんだよね。だから君とは付き合えない」
「それ、誰か教えてくれないんですか?納得いきません!」
あいつの大事な人は誰なんだろう。何故俺にすら言えないのだろう。
あいつは、なんて応えるんだろう
「それは言えない、俺の片思いだから。今はこの距離がいいんだ」
「どっちにしろ私には勝ち目ないんですね…」
「うん、俺はそいつのことすっごい大切だから」
ズキン、と心が痛む。
前までは失恋で立ち直れないとかどんだけだよ、と友人に軽口叩いたけど俺も人の事言えなかったんだな。
「その子には告白しないんですか?」
「今は一緒に、近くに居れる、それだけで充分なんだ。だからまだ告白はしない、出来ない」
「両想いって可能性は考えないんですか?」
「うん、あいつは俺の事親友だと思ってるから」
お前も俺と同じなんだな
じゃあ、俺はそれを心から応援しよう。お前の一番近くで。
「そう…ですか、今日は来ていただいてありがとうございました。少しすっきりした気がします」
「気持ちに応えられなくてごめんね、それじゃあ!」
そう言って春久は帰って行った。
残された冴木さんは1人声を押し殺して泣いていた。
それはこの夕焼けには不釣り合いだった。
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