もどかしい君との距離

4/5
前へ
/45ページ
次へ
放課後、俺は先に帰ると春久に言ったが、やっぱり待つことにした。 すると必然的にあいつの告白現場を目撃する訳であって、 「あ、あのっ、春久くんのことがすきですっ!…私じゃ駄目ですか?」 聞こえた。 モヤモヤ、この感情に支配される。 「ごめん、俺大事なやつがいるんだよね。だから君とは付き合えない」 「それ、誰か教えてくれないんですか?納得いきません!」 あいつの大事な人は誰なんだろう。何故俺にすら言えないのだろう。 あいつは、なんて応えるんだろう 「それは言えない、俺の片思いだから。今はこの距離がいいんだ」 「どっちにしろ私には勝ち目ないんですね…」 「うん、俺はそいつのことすっごい大切だから」 ズキン、と心が痛む。 前までは失恋で立ち直れないとかどんだけだよ、と友人に軽口叩いたけど俺も人の事言えなかったんだな。 「その子には告白しないんですか?」 「今は一緒に、近くに居れる、それだけで充分なんだ。だからまだ告白はしない、出来ない」 「両想いって可能性は考えないんですか?」 「うん、あいつは俺の事親友だと思ってるから」 お前も俺と同じなんだな じゃあ、俺はそれを心から応援しよう。お前の一番近くで。 「そう…ですか、今日は来ていただいてありがとうございました。少しすっきりした気がします」 「気持ちに応えられなくてごめんね、それじゃあ!」 そう言って春久は帰って行った。 残された冴木さんは1人声を押し殺して泣いていた。 それはこの夕焼けには不釣り合いだった。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加