58人が本棚に入れています
本棚に追加
「……てる?聞いてるー?」
「……ん。ああ」
彼女はベットの隣に座っている僕の顔を覗き込む。
彼女の病室。僕の病室と同じ階の反対側の端。
高校2年生になった四月。あれから3年も経ったのかと考えると長いのかもしれないけど、僕たちが会うのは年に2週間ちょっと。
それに一緒にいる時間はもっと少ない。たまにふらっとお互いの病室に行って他愛のない話をして帰ってくる程度。
僕が彼女のことを知ってるかと言われると自信がなくなる。彼女がそこまで生きたいわけじゃないっていうのと、心臓の病気を持っているってことは話してて分かったけど。所詮はその程度。
僕は軽く彼女の方に体を向けなおした。
ゆーちゃんも合わせて体制を整える。相変わらず右腕に刺さった点滴に細い体。腕とか……折れそう。たまに、みてて怖い。
“ゆーちゃん”
残念ながら僕は彼女の名前を知らない。彼女も多分僕の名前を知らないだろうし、別にそれでもいいと思っている。ただ、誰かがそう呼んでたから呼んでるだけ。
彼女も訂正しないからそれでいいんだと思う。
ほんとに、僕らの関係はなんて言うんだろうか。
少し、考え事、と答えるとゆーちゃんはいつもと変わらず「そっかー」と笑う。彼女の笑い方は変わらない。無関心、くらいが僕にとっても楽だけど、たまに怖くなる。
何を考えてるのかわからない人は苦手だ。
…………僕と似ている気がするから。
最初のコメントを投稿しよう!