それでも少女は嘘をつき続ける

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2. 「私、あと2年くらいで死んじゃうと思うんだよねー」  彼女がそういったのは僕が退院する日の朝。軽くベットを整えたり、荷物の整理をしている途中、彼女はなんの前置きもなく淡々と言い放った。  ……それに、しても。“死ぬ”か。僕は持っていた布団を置き、彼女の方を向いた。    ____笑ってない。  なにより、いつものように僕にしっかりと目を向けていなかった。 「それ……誰から言われた…の?」 「お医者さん」  検査結果、危なかったからねー、と付け足す。  こういう時って、なんて言えばいいのかわからない。  自分の頭の中で死の文字が繰り返す。必死に声をかける言葉を探す。こういうときって_____ 「私、後悔、してないよ?」 「え?」  ゆーちゃんは笑っていた。  おい……、笑うとこじゃないだろ。それに後悔って何だよ。病気、自分の所為じゃないだろ? 「余命宣告とかってね、本当はお医者さん、言いたくないんだよ。よっぽどのことがない限り、お医者さん自身から言わないと思うよー?他人の寿命なんて」 「え……でも、今」 「うん、自分から聞いたから。だから、後悔してない」 「____そっか……」  そっかー、なんて言えることではないのは分かっている。そんなことは分かっていた。  人が死ぬと聞いて、ああそうですかと返せる程僕は薄情な人間ではないと思っている。ただ、僕たちは、こんな関係だったから。    何にも、知らないから。  簡単に人の命について語れるほど、僕たちはお互いを知らない。    「あと2年もあるから大丈夫なんだよー」  そう言ってゆーちゃんは笑う。  でも、目は合わせてくれなかった。  下を向いて、うつむきながら、それでも笑っているのがわかるのは、彼女がとても楽しそうに話すからだと、そう思った。  彼女は、そのまま振り返って、ドアの方へ歩いていく。    出口のところで立ち止まって。僕の方へ振り返らずに手を振った。 「じゃあ、また来年も会おっかー」 「じゃ、来年」 「____待ってるね」 「うん」  彼女はあと2年は生きられる、と。そう言ったから、多分大丈夫だと。そう思ってほっとしてしまったから、  僕は彼女の最期の挨拶にそこまで気を取られていなかったんだろう。 「約束は、守れないね…………」  だから彼女が泣いていたのにも、気付かなかったんだ____
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