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「結局……最期まで嘘つき、か」
ふぅっと、ため息を吐きながら窓の外に視線を移す。病院の周りを囲っている桜の木は花びらを見せ、風に揺られてながら軽く靡いていた。
そう言えば、彼女は上から見る桜は綺麗だとか言ってたっけ。僕は下から見たほうが綺麗だと思うけれど。……まあ、そんなのはあくまでも個人の価値観だからいいや。
四月。僕は毎年恒例の入院を繰り返す。僕は右手で軽く胸のあたりを押さえた。本当にこの体はどうなってるんだろうか、そんなに四月に反応しなくてもいいというのに。
「四月、私は好きだよー、だってお話しする相手がいるんだもん」
2週間だけのお友達。
そう言って笑った彼女はもういない。
それは、退院したという意味ではなくて。治らない病気を持った彼女にそんなことはあるはずがなくて。
この世にいない、ということ。
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