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「…あの…ね… 大原先輩の家に呼ばれて… 旦那さんが鳴海先生のいた大学病院で働いてるからって…」 「あ! 大原さんの旦那ってあの大学病院の薬剤師だった! 私、研究会で挨拶されたことあるよ! まさか…夏妃ちゃん行ったの?」 こくり、 頷く私を見て絶句する智衣。 「…話は全部、動画どおりで… そんな話を楽しそうに話してくれるあの夫婦… 噂好きにも程があるなと思ったけれど… …先輩の挑発にのって聞きたくなってついていった私も結局同類。 話は予想以上に先生の気持ちが悲しくて…痛くて… 途中で…飛び出して来ちゃった… そのあとの京奈さんのことは病棟の看護師さん達が噂してるとおり。」 「…そうだったの…」 「…」 …心カテの救急患者が沙和さんのお父さんだったことは何となく黙っていることにして、私は静かにグラスを置いた。 そして目を閉じるとついこのあいだのことなのにまるで昔のことのように瞼の裏に記憶がよみがえってきた…――
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