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「この辺?」
緊張して下ばかり見て歩いていた私は先生の声にハッとして顔をあげた。
あたりを見るともう家の近所まで来ている。
「あああのッ!ありがとうございました!」
あわててドモってる私。
その時、
一瞬の出来事。
急にふわりと目の前が暗くなる
そして…
「この間の救急の時は…ありがとう。君がいたから何だか落ち着けたよ…」
と、耳元に優しい息づかい。
そして、冷たくなった耳に暖かい唇の感触。
「え…」
本当に一瞬の出来事。
思わずギュッと目を閉じて肩をすくめる私。
何が起こったのかわからないうちに開けてみた目の前には背中を向けヒラヒラと手を振り歩き出す先生。
――ぼうぜんと立ち尽くす私が状況を理解したのはもう先生がすっかり去っていった後だった。
私の耳に触れた先生の唇…
その夜、よく眠れなかったのは言うまでもない…
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