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そう言った私を運転席の先生はチラリと見ただけだった。 だって、信号が青に変わってしまったから。 薄暗い車内では前を向いてしまった先生の表情はよめない。 「…」 う…無言が怖い… 何か…何か話さなきゃ…! 「あ、あ、あの… ところで…実家は何県…? 遠い?」 「んー…遠いね… …歩くとね」 そっか遠いんだ… じゃあ会えなくな… ん? んん? んんん? あ・る・く・と? 「ちょっと待って? 歩くと、って? …一体どーゆう…」 「となり町だから。」 「へ? 実家…って遠いんじゃ…ないの?」 「そんなこと俺、一言も言ってないしー」 確かに。 「となりまちって…」 「電車で5個目。 ほら、歩くと遠いだろ?」 はぁぁ? 車を止めた先生は目が点になっている私に向かってニッと意地悪な笑顔をすると顔を寄せてきた。 キスされる! そう思い目を閉じると
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