第1話ジョディの物語

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第1話ジョディの物語

あたし、ジョディ。 子どもの頃、このお家の人に買われて来た。 立派なお布団、美味しいご飯、豪華なお洋服。 あたしは着飾って可愛がられたの。 だから、勘違いしてた。 あたしはこの家の子だって。 この家に本当の子どもが産まれた途端、あたしは厄介者になった。 その子が動物の毛のアレルギーだったから。 アレルギーって厄介なんですって。 咳き込んだり、肌が赤く腫れ上がったり、喉が腫れたら息が出来なくなって死んでしまうこともあるって。 だからあたしは、一つの部屋に閉じ込められることになったの。 外には大きなお庭があって、そこに出してくれるだけでも良かったんだけど、私の声なんて届きやしない。 部屋も狭くはなかったけど、あたしは外に出たかった。 お手伝いさんがあたしの部屋に来たときは、外に出してくれるのかしらと思って、思わず飛びついてしまったわ。 そしたら彼女はその場で倒れて、あたしは興奮して部屋の外に出てしまったの。 家中を駆け回って、あたしを捕まえようとする人を振り切って。 楽しかったわ。 みんながあたしの動作に右往左往するの。 追いかけっこをしてる気分だった。 そんな時、目の前に小さい子どもが這い這いしていたの。 あれは何だろうと近づいたら。 その子は突然、顔を腫らしてぎゃあぎゃあ泣き出して、ママが出て来てあたしに怒鳴った。 「出て来るなって言ったでしょ!」 それは鬼のような形相で。 そんなママの顔を見たことがなかったあたしは、ビックリして怯えてしまった。 どうしてそんな顔をするのママ。 あたしの大好きなママはいつでもあたしを抱っこしてくれて、頭や身体を撫でてくれて。 こんな怖い顔で怒鳴る人は違う。 「早く部屋に戻りなさい!」 頭をはたかれて、あたしは思わずママの手に噛み付いてしまった。 「キャッ!痛い!」 ママは驚いた顔であたしを見て。 そして隣のお手伝いさんに言った。 「ジョディを保健所に連れて行って。この子はアレルギーだし、もう無理よ。」 そんな理由で、あたし「ラブラドールのジョディ」は、保健所に連れて行かれたの。
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