11人が本棚に入れています
本棚に追加
不意に肩を叩かれる。
僕は窓際の一番後ろの席。つまり、叩いたのは天野だ。
天野は無言で机に1枚の紙を乗せると、すぐに正面を向き直した。
その紙には一言、
『ごめんなさい』
とだけ書かれていた。
「…………」
お前が謝る必要なんてないんだよ、天野。
悪いのは全部僕だ。
その言葉は、僕が言うべき言葉なんだよ。
「ふう、今日は暑いな」
大きな体格をした国語の男性教師は、額から汗を流しながらそう言い、窓を開けた。
ふっと篭った教室の空気が爽やかなものへと変わるのを感じ、僕は窓の外を見やった。
もう、春は終わった。
これから夏が始まる。
こんな灰色の青春に夏なんて関係ないかも知れないけれど、僕の胸はその思いとは裏腹に自然と弾んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!