「転校生」

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僕は人に触れてはいけない。 僕が触れる人は皆、気を失う。そして、目を冷ますと「誰?」と言って僕を見るのだ。 この手の存在に気づいたのは幼稚園の頃だった。 当時、一番親しかったった友人の記憶を消して、初めてその違和感に気づけた。年端もいかない子供にとって、それはあまりに酷な現実だった。 僕が触れた人は記憶を失う。僕の記憶だけを、最初からなかったかのように忘れてしまうのだ。 どうしてこんなことになってしまうのかは分からない。 でも、唯一僕は人に触れるべきではないということは分かった。 だから高校生になった今でも、友達は一人もいない。 必要としては、いけないから──
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