「転校生」

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「今日は皆さんとのお近づきの印にと思って、プレゼントを持って来たんです! 気に入って貰えると嬉しいんですけど……」 プレゼント? 皆が見守るなか、天野は淡々とした動作で皆に袋の中身を配って行った。 …………。 クラスが急に静かになる。 先生もこれにはどう対処していいのかわからない様子だ。 「私の地方の神様なんですけどね、邪な物を祓う効果があるんですよ!」 ああ、これって神様なんだっけ。鬼のイメージが強すぎてたまにわからなくなるよ。 僕の手元には、大きな口から二本の太い牙をむき出し、怒ったような顔をした鬼の顔……。 なまはげだった。 僕らの机に一つずつ、赤と青のなまはげのお面が、威圧感たっぷりに並んでいた。 『(なんでなまはげ…………!?)』 友達のいない僕でも、このときのクラスメイトの気持ちは痛いほどよく分かった。 僕たちの空気が一変したのを見て、天野は明らかにがっかりした様子だった。 「あ、あれ……? もしかして、嬉しくなかったですか……?」 僕たちに衝撃が走る。 皆、はるばるやって来た転校生を落ち込ませるのには抵抗があるようだった。僕だってそうだ。 記憶を消させないため周りと距離を取ってはいるが、僕も人の悲しそうな顔なんて見たくないのだ。 僕は手元のお面を手に取り──顔にはめた。 それを見たクラスメイトも同じようにお面を付けていく。 ──五分後、クラスメイト全員がなまはげになるという、意味不明の状況が出来上がっていた。 図らずも、クラスメイトが一体となった瞬間だった。 これで転校生を悲しませずに済む。 そう安心していた僕らに、転校生がこんな言葉を残した。 「こ、怖っ!!」 『(お前が渡したんだろこれ!!)』 不本意ながら、僕が入学してから、一番クラスメイトと心を通わせることの出来た30分だった。
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