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あの後、何故か天野の席は僕の右隣に決まった。
いや、理由が分からなくもないのだ。大方、あのお節介の担任教師が友達のいない僕に転校生と仲良くなるチャンスを与えたのだろう。
僕は頬杖をつき、はあ、とため息を吐いた。
僕のために頑張ってくれていることは分かるのだが、僕自身にはその気がない。
無意味なことをさせてしまっていると思うと、少しだけ罪悪感で胸が痛くなる。
ふと隣の席を見る。
件の転校生、天野は周りをクラスメイトに囲まれ、質問責めにあっていた。
第一印象はトンデモ少女のそれだったが、会話を聞く限り性格は普通らしい。逆に、気さくで話しかけ安いのか、一時限目まで時間がないというのに
人の足が途切れる気配はなかった。
「ねえねえ天野さん、前の学校では何か部活やってたの? 天野さん運動得意そうだから、ソフト部とかぴったりだと思うんだけど!」
女子の一人が天野に話しかける。
天野は一瞬顔を強ばらせると、ばつが悪そうに言った。
「あー、ごめんね。私スポーツ苦手なんだ。運動神経もそれほど良くないし。ほんと、ごめんね?」
両手を合わせ、苦笑いを浮かべる天野。
女子はそれを聞くと、残念そうにしていた。
すると、話の途切れを待っていたかのように予鈴のチャイムが鳴った。
「じゃあ天野さん、またね」
「うん、ありがとうね」
そんな挨拶をして、全員席に着くと思いきや、一人、さっきの女子生徒が思い出したように天野に近づき、何かを耳打ちした。
天野は一瞬顔をしかめ、嫌な顔をしていた。
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