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「……何で?」
思わず問いかける。
何故転校してきたばかりのお前にそんなことが分かるのか。理由が知りたかった。
──もしかすれば、このときから予感はしていたのかもしれない。
彼女──天野 ひよこという女の子が僕の人生を変えてくれるのではないかという、予感が……。
「だって君……白須君が私のお面一番最初にはめてくれたの、私知ってるよ? ……まさか全員はめるとは思ってなくて、ついあんなこと口走っちゃったけど、本当は凄く嬉しかったんだ」
視線をずらし、頬をつり上げてはつらつとした笑みを浮かべる天野。
そして、こちらを再度見ると、手を伸ばしてきた。
「私と、友達になってくれませんか?」
その表情は真剣そのもので、本気だということが分かる。
でも、僕は……。
「ごめん、それは出来ない」
昔、まだこの手から抗おうとしていた頃。
僕はそのときは友達を作ることを諦めていなかった。
クラスメイトと話をしたり、どこかに遊びに行ったりもした。
この手が触れさえしなければいい。そういう考えで、僕は友達と付き合っていた。
でも、ある日のことだった。
友達の一人が階段から落ちたのだ。
真下にいた僕が少し押さえるだけで、防ぐことの出来るぐらいの軽い踏み外しだ。
でも、僕はその友達を避けてしまった。
結果、その友達は頭を何針か縫う大怪我をした。
もちろん謝った。何度も頭を下げて「ごめん」と泣きながら繰り返した。
すると友達は、
「なら握手をしてくれ。仲直りの握手だ」
と言って、右手を差し出してきた。
僕は、それに応じることが出来なかったんだ。
そして僕は一人になった。このとき同時に、友達を作らない決意もしたのだ。
仲直りすら出来ない僕が、友達を作る資格なんかない。そう思ったから。
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