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日曜日だったが時間が早いのか空いていた。
適当な場所を見つけ皆で荷物を降ろす。イレギュラーの発生で俺へのゲスト待遇はすっかり無くなっていた。
けれどこの方が気が楽だ。
雨の心配はないだろう。僕たちを取り囲む緑と青とそして流れる白が川面に映っている。
焼けた小石がビーサンに刺さる。
コンロを組み立てながら辺りを見回すと、興味の赴くまま自由気ままに動くお子様の後ろを、いくもがマンマークでついている。
川に入ろうとするたっくんの手を握り、
い「川はダメ。危ないから」
た「何で?」
い「危ないからって言ったじゃん」
た「危なくないし」
水を前にして、子供を制するのは至難の技である。
早くもテンパり気味のいくもさんがキョロキョロとこちらを見る。目が合い、右手を傾げ俺を呼ぶのが見えた。
近くにいた姉に、「何か困っているみたいよ」と告げ、いくもの方へと歩いていく。
会話は聞こえていたから、そのまま川に入り確かめる。
俺の背中にいくもが言う。
「ほら、よくあるじゃない。子供が川で溺れ、助けに行った高校生行方不明なんてニュース……」
その高校生って俺っていう設定?
向こう岸まで渡ったが、くるぶしの上ぐらいの深さしかない。
大丈夫だとは思ったが、預かっている子供だし、いくもの心配はもっともである。
振り返り戻ろうとすると、姉が川辺に立っていた。今度は姉が俺を呼ぶ。
小さな枝を振りながら偉そうに俺に言う。
七「少し大きめの石を持ってきて、ここ囲んじゃって」
言われたとおりにし、川の一画を外の流れと遮断する。
七「たっくん、この石から外出たらダメな」
た「うん、わかった」
車中ずっと話し掛けていたせいか、七海さんの言うことは素直に聞くようだ。
咲もやってきて、「コンロもこの横に持って来よう」と言う。
なるほどと陣地を15mほど移した。
咲「たっくん、服脱いじゃいなよ」
そう言われ、早速白いブリーフ姿になり、脱いだ服を咲に渡す。
咲「たっくん、悩ましい(笑)」
駆け出そうとするたくやの野郎を捕まえて、咲が念入りに日焼け止めを塗っていやがる。
た「くすぐったぁい」
とか言う。
イチャイチャしてんなよ、お前ら。
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