ep.11

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日曜日だったが時間が早いのか空いていた。 適当な場所を見つけ皆で荷物を降ろす。イレギュラーの発生で俺へのゲスト待遇はすっかり無くなっていた。 けれどこの方が気が楽だ。 雨の心配はないだろう。僕たちを取り囲む緑と青とそして流れる白が川面に映っている。 焼けた小石がビーサンに刺さる。 コンロを組み立てながら辺りを見回すと、興味の赴くまま自由気ままに動くお子様の後ろを、いくもがマンマークでついている。 川に入ろうとするたっくんの手を握り、 い「川はダメ。危ないから」 た「何で?」 い「危ないからって言ったじゃん」 た「危なくないし」 水を前にして、子供を制するのは至難の技である。 早くもテンパり気味のいくもさんがキョロキョロとこちらを見る。目が合い、右手を傾げ俺を呼ぶのが見えた。 近くにいた姉に、「何か困っているみたいよ」と告げ、いくもの方へと歩いていく。 会話は聞こえていたから、そのまま川に入り確かめる。 俺の背中にいくもが言う。 「ほら、よくあるじゃない。子供が川で溺れ、助けに行った高校生行方不明なんてニュース……」 その高校生って俺っていう設定? 向こう岸まで渡ったが、くるぶしの上ぐらいの深さしかない。 大丈夫だとは思ったが、預かっている子供だし、いくもの心配はもっともである。 振り返り戻ろうとすると、姉が川辺に立っていた。今度は姉が俺を呼ぶ。 小さな枝を振りながら偉そうに俺に言う。 七「少し大きめの石を持ってきて、ここ囲んじゃって」 言われたとおりにし、川の一画を外の流れと遮断する。 七「たっくん、この石から外出たらダメな」 た「うん、わかった」 車中ずっと話し掛けていたせいか、七海さんの言うことは素直に聞くようだ。 咲もやってきて、「コンロもこの横に持って来よう」と言う。 なるほどと陣地を15mほど移した。 咲「たっくん、服脱いじゃいなよ」 そう言われ、早速白いブリーフ姿になり、脱いだ服を咲に渡す。 咲「たっくん、悩ましい(笑)」 駆け出そうとするたくやの野郎を捕まえて、咲が念入りに日焼け止めを塗っていやがる。 た「くすぐったぁい」 とか言う。 イチャイチャしてんなよ、お前ら。
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