ep.11

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コンロに炭を敷き詰め火を着けようとするが、毎度のことながら上手くいかない。 中心をくりぬいた円柱状の炭が安いのでいつも使っているのだが、毎回手間取る。 次第に着火マンを押す指先が痛くなる。 七海さんと咲音さんがしゃがんで座り、揺らぐ炎の先をじっと見ている。 そんなに熱視線を送られても着かないものは着かない。催促されているような、また、期待になかなか応えられない状況にもやもや感が募る。 ね「……何?(笑)」 七「着いた?」 咲「着いた?(笑)」 七「着火剤、必要だった?」 咲「必要だった?(笑)」 そんなサツキとメイに苦笑いを浮かべるしかない。 5つの手のひらでぼんくら炭太郎を囲みようやく炭の縁が白くなる。 ふう…… 七「代わろうか?」 咲「代わろうか?(笑)」 ね「…………うん、そうだね」 立ち上がり腰に手をやる。 簡易幼児プールでは、たっくんが寝そべりばた足を繰り返していた。戦隊物がプリントされた白いブリーフが泥を吸って薄茶色に変色している。 いくもさんはワンピースの裾を少し持ち上げ、積んだ石の上にしゃがみ、時折ぱしゃぱしゃとたっくんに水をかけていた。 背後でこそこそ話す声がする。 七 (あいつさ、いっつもそうだけどさ、説明書通りにこの赤い着火点に火を着けようとするじゃん?) 咲 (そうそう、縁の方が着きやすいっていつも言うのにね(笑)) 七 (忘れちゃうのかね(笑)) 咲 (たぶん、きっちり説明書通りにやりたいんだよ(笑)) 七(几帳面ジャーやね(笑)) 咲 (案外そうだよね(笑)) ふん、誰がやっても着きにくいんじゃ、ボケ。 振り返りコンロを覗くと20個余りの炭にもう火を着け終わっている。 ………… 拗ねた俺は、姉たちに背を向け体育座りで座り川面に小石を投げる。 本気で拗ねているわけではもちろんない。 けれど、そんなふりでも続けていると、どうちた、僕?的な弄りが始まるので気を取り直し立ち上がる。 笑顔の中に爽やかの4文字を目一杯詰めて二人に言う。 ね「よし、後は俺に任せとけ!」 七「別にいい(笑)」 ね「……」 本格的に拗ねた俺は、慰めを乞い、いくもの元へと歩く。 ね「ねー、いくちゃん、遊ぼ(笑)」 無言でいくもが立ち上がる。 そしてゆっくりと振り向き情けない表情を浮かべた。 ね「どうした?」 いくもの下くちびるがにゅ~っと突き出る。 ね「ん?(笑)」
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