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して、過剰な自負心を小さな体躯に抱きながら、今回の任務も簡単にこなして、完璧に成功させてしまえるのだという自信もうまれた。
思考を止め、スカートの内側に隠していた数本のナイフを確認するようにそっと撫でながら、彼の家へと近付く。一歩歩む度、それまで私が殺した人間達の顔が脳裏に浮かぶ。
まるでスライドショーのように次々と、ナイフを突きつけられて怯える顔や私を怨めしそうに睨みつける顔が浮かんでは消えた。
「ふふっ。」
常人なら気を違(たが)えてしまってもおかしくは無い光景であったが、私には今回の成功を裏付ける為の、昔獲った『首塚』でしか無かった。
そして私が切り裂いた人数と比例してその意味は大きかった。
更に、私にわざわざ課される任務は部署内でもその内容とは隠密かつ残酷に、であったからかなり異質で、その為に養成された私はいつだって容赦なくそれらを成功させた。
近づいた表札には山田、と楷書体で記してあった。
行動と思考回路だけでは飽きたらないようで、名前すら同情すべき平凡さだった。
目に入ったガレージ内の車は、誰でも知っているような外国の車だった。
一度は乗ってみたいなぁ、と女らしくない事を思いながらチャイムを横目に、門を素早く思い切り飛び越えた。
つかつかと前進し、ドアノブに手を掛ける。
「お邪魔しまぁーす。」
玄関の鍵を、事前に確保されていた合鍵で堂々と開け、少しの緊張と共に扉を開いた。
その瞬間に、目に映った光景――広い玄関の左に階段、右に扉が二つある事――を把握した。
警備の人間が居るかもしれないと念を押されていたので、即座に身構えていた手をほぐしながら無人の玄関に土足で上がりこみ、そこでいったん静止した。
息を整えて、止める。
「……。」
二階から聞こえる話し声から、家族は上の階に居ることを把握する。
同時に、警備要員と一緒の空間に居るような雰囲気ではない事で、この家は無警戒状態であろうと察する。同時に、隠していたナイフをスカートからするりと取り出した。
―――――さ、やっちゃおう。
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