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「千鶴ちゃん可愛い。千鶴ちゃんの初めて、俺がもらいたかったなあ」
「なら、今日が初めてです。さっき岩田さん言ったじゃないですか、初めからもう一度って。だから今日が初めてです」
「ははは。そうか、そうだね。今夜が初めてだと思って千鶴ちゃんを抱く」
そう言って岩田さんは私の胸に顔を埋めた。優しく優しくリードする。触れるようになぞる。
「初めてって重要ですか?」
「男のロマンみたいなものだよ。女の子は相手が初めての方がいい?」
「んー、慣れてなくて痛いことされるなら、慣れてる男の人の方がいいです」
「和也は痛かったの?」
「雑で乱暴でした。だから……」
岩田さんの手は凄く優しい。耳元で囁く声も指使いも。壊れるものをそっと抱くみたいに扱う。和也は“気持ちいーか? 気持ちいーか? すんげー気持ちいーっ!”と一方的だった。お互い初めてだったから仕方がないけど。
じゃあ岩田さんは……。3児の父親だし初めての筈もない。結婚する前だって彼女はいただろうし、結婚後は美穂を何度も何度も抱いたんだろうし。その過程があるから、こんなにも上手なんだし。
「い、岩田さ……ん」
「いいよ」
その慣れた愛撫に私は頂点を迎えた。
「良かった?」
「は、はい」
「“初めて”なのに?」
「い、意地悪です、岩田さん」
岩田さんは腕枕を外して再び私にキスをする。前戯という言葉があるなら後戯、火照った私の肌を鎮めるようになぞる。女性の体を知り尽くしている。
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