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……そうか。岩田さんは美穂と何度もやっている。毎晩同じ屋根の下、夫婦だし当然。そんなこと言ったら私だって主任とエッチした。大学時代の同級生ともした。和也ともした。あれから時間は確実に経っている。
翌朝、目覚める。横を向けば岩田さんの寝顔。私は少し照れた。そして少し冷めた。シワのある目元、口元。焼けた肌。40代の男性。
もう、初めてなんかじゃない。15歳の私じゃない。35歳の私。布団のこすれる音で岩田さんも目を覚ました。起き上がって私にキスをするとベッドから降りる。
「岩田さん」
「何」
「私、決めました」
「何を?」
「やっぱり岩田さんとは付き合えません」
バスローブを羽織っていた岩田さんは振り返って私を見てキョトンとした。
「おい、千鶴ちゃん。男と寝た後に付き合えないって。自信なくすよ」
「いえ。エッチが下手とか相性が悪いんじゃないです。すごく気持ちよかったし、嬉しかったです」
「じゃあ、何故」
「巧すぎるから。そんな風に美穂を……」
「美穂を思い出すから?」
「それもあります。でも、岩田さんはあのこ頃の岩田さんじゃないって。美穂と付き合って美穂と結婚して、美穂と生活して。岩田さんの一部に美穂が住み着いてる感じなんです」
「まあ、そうだけど」
「だから、何て言うか……。私が恋焦がれていた大学生の岩田さんじゃないんです」
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