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……一年後。
私は牧草地の上で寝転がっていた。
「千鶴さん。そんなところで寝てるとチヅルに踏まれますよ」
「チヅルはそんなことしません」
「じゃあ僕が踏みますよ」
つなぎを着た鏑木さんは踏みつける真似をしてから私の上に覆い被さった。そしてキスをする。
「んもうっ! 見られちゃう」
「牛にですか? 父も母も出掛けましたけど。なんならここで野外プレ……」
「ユウジさんの馬鹿っ!」
私は鏑木さんと結婚した。新婚1ヵ月。まだまだ牛の世話は慣れない。毎日疲れるけれど、景色もいい、空気もいい、牛乳も美味しいこの大沢の地は好きだ。私と正反対の人。おっとりしてるくせにしっかりしていて、この人なら一生そばにいても苦にならない気がした。勿論、男性として(少しは)惹かれるものもあったし。
「可愛いですよ、千鶴さん」
「ユウジさんも。牛を力強く引く姿はカッコいいです。ぷっ!」
「笑いましたね。今夜は覚えてなさい。父も母も今夜は帰りませんし」
「う……」
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