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私は某出版社で編集長を務めている者だ。この手の業界では名が知れている方で、毎年、様々な新人や新しい作品を世に送り出している。その為、毎年、元旦にもなれば多方面からの年賀状が送られてくる。こちらも、礼儀、しきたりに従って出しているので当たり前のことなのだが。この年賀状という礼儀も関係者が増えるとそれだけ、多くなるから苦労する。毎年、必ずといっていいほどに新しい人からの年賀状がくる。くれば、それに返信するのが礼儀だ。年末から年明けに掛けて私は年賀状と悪戦苦闘しているのだ。
前置きが少し長かったな。そんな毎年の年賀状に悪戦苦闘する話は今は、どうでもいいことだ。私は今、一枚の年賀状に悩まされていた。
それは、元旦のことだ。郵便受けには収まりきらない年賀状が自宅へと届けられ、妻と一緒に私はおせちを食べるのも、そこそこに整理していた。出版関係者から旧友、変わったところではサービス業界からの年賀状もある。私と妻に仕分けしながらの元旦であるが、その中にソレは混ざっていた。
「ん?」
年賀状の仕分けをしている中、私の手は止まった。それというのも、年賀状の中に見慣れぬ名前があったからだ。
『賀正
新年あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたします
葉子』
年賀状の中身はありふれたものだ。私はこの『葉子』という名前が妙に引っ掛かった。全く知らない訳ではない。葉子という名に聞き覚えがある。だが、肝心のどのような人物なのかと考えると、全くもって思い出せないのだ。住所も書いておらず、どこの葉子なのか見当もつかない。出版社という数多くの人達と接する仕事に就いている柄、どこかで会ったことがあるかもしれない。いや、間違いなく会っているはずだ。そうでなければ、年賀状を自宅まで出そうと思わないはずだ。そうなると、葉子とはどこの誰なのか。
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