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 と、その時、私の頭上に電気が点いた。 やはり裸電球で、強い光は私に数回まばたきをさせ、目を擦らせる。 私のまわりはより明るくなった。 そしてやはり、私はフランス人形に視線を奪われた。  気味が悪い。  こっちを、見ないで。  そう思うのに、私はフランス人形から目を反らしては、また戻していた。  フランス人形は大きなチェストの上に座っている。 チョコレート色のチェストのその大きさは何かを塞ぐかのように佇んでいる。 何か、はすぐに見えた。 扉である。 壁際などに置くはずのチェストは、その大きさに見合う大きな扉を塞いでいる。 フランス人形は、ただ座っているのではなく、まるで番人のようだ。 金色の巻き毛に西洋風のドレスは薄汚れていて、肌も傷のように所々黒く汚れている。 アンティークドールというものか、おそらく肌は陶器なのだろう、私は思った。
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