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友国であるレスポーラに寄り、キルヴィス様をシルファ姫に会わせてあげられるのは、僕としても喜ばしい。
が、問題はそこに至るまでの道。
シュトラト公国といえば、他国に戦争を仕掛ける頻度が非常に高く、グランフォード…いや、この大陸中の国家と険悪な関係だ。
グランフォードだけで見ても、僕がこの二十三年間で経験しただけでも二回…大きなモノで言えば十年以上昔のものだが、数年前にも戦争をしていた。
どちらも、僕…いや、ウェイバーにとって大切な人を奪ってしまうものだった。
数年前は互いに何らかの約定を以て一旦収めたとはいえ、未だに両国間の緊迫状態は続いているのだ。
「姫様…何なら遠回りして、ディストール帝国から向かうのもありかと…」
正体が知られるなんて中々無いだろうが、それでも万が一を考えたらグランフォードの姫がシュトラトに入るなど、危険すぎる。
「いつもキルヴィーでいい…そう言っているではありませんか。」
「話を逸らさないで下さいよ…」
辟易しながら言葉を返す僕に対し、キルヴィス様は不敵に笑う。
「だーいじょうぶ、ですわ! ワタクシの精霊魔術と、貴方の武を以ってすれば、楽勝ですことよっ!」
楽観主義の彼女に付き合うのも、中々に大変なものである。
しかし、それも悪くない。
「ハァ……分かりました。 一応、用心はして下さいね。」
「流石ワタクシの騎士ですわ! それでは、行きましょうか!」
高笑いをあげながら歩き出す姫の後に溜息混じりに続くのも。
それも、悪くないんだ。
騎士にあるまじき感情だけれど、僕はそんなキルヴィーの事が───
「ほら、置いて行きますわよ!」
眉を寄せて振り返る彼女に苦笑しつつ、僕はその歩みを早めるのであった。
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