1.それぞれの決意と旅立ちなんてロクな事がない

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まぁこんなものを見たからといって、これからの行動に何か変化があるかと聞かれれば答えはノーだ。 これを見て“魔族側の事情”が真実だと確信したシルファにとっては更なる起爆剤になるとは思うけど。 「…わたし、頑張ります! …必ず、人間と魔族の共存……一国の姫として責任を持って臨みたいと思います!」 「おっ! よくぞ、言った!」 「いいぞ、シルファちゃーん!!」 その両目に強い意思の炎を灯して胸の前でぎゅっと握り拳を作るシルファと、いつの間にかシルファのファンになっていた村の男ども。 なんでも、ミラが俺を自分のオトコにする発言をしてしまった事で、更にその熱が高まったとか。 まぁとは言っても、村に来てから俺が牢の中で傷を癒してる頃には既に、その人気は上がっていったらしいのだが。 「皆さんがこんなに実りの少ない土地で生きている…この現状を何とか変えてみせます! …もし帝国が受け入れなかったとしても、レスポーラはいつでも受け入れますし、帝国もいつか首を縦に振らせます!!」 そう、“魔族側の事情”を争い無しに解決するには、人間側が受け入れるしかない。 その事情とは、簡単に説明するのなら、今の帝国の土地は元々彼らのものであり、人間から迫害を受けていた…そういう話である。 そして、人間に追いやられた魔族や鬼族の様な一部の種族には、実りの少ない痩せこけた土地しか残されはしなかった。 それが現在魔境と呼ばれる土地だ。 魔王──あの黒猫は、二千年前にその現状を打破しようと奮戦して絶望の中倒れた…そんな魔族の意識に影響を受けて意思を持ってしまった精霊らしい。 だからこそ、人間を…世界を滅ぼしてしまおうとしたのだという。 それらが今まで読み進めたページや、先ほどまで読んでいたページも含めた聖女の手記によって完全な事実として知る事となった。
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