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四月。桜の花びらを散りばめた、川沿いの遊歩道を、小学三年生になったばかりの桃華が一人で歩いていた。
下校途中である。
そこから二十メートル程離れて、怪しい人影が一人……
人影はスエットの上下姿でフードを被っている。
長身の男で、時折立ち止まってはシャドーボクシングを繰り返しているので、ロードワークとも見て取れるが、サングラスにマスク着用と言う出で立ちであった。
付かず離れず。あきらかに男は桃華を尾行していた。
校門から、この遊歩道が終わるまでの間の約五百メートル。
新学期が始まってから、一日も休む事無く、この尾行は続いていた。
「あいつ誰とも口効かないよな?」
「何かキモい!」
「そうか?でも可愛いぞ」
スエット姿の男の後ろからやって来た、男子児童の一団の会話に男は聞き耳を立てた。
「エエーッ!! キモいよ!
お前、あいつが好きなんだろ」
「ヒューヒュー……」
児童達が、可愛いと発した児童を囃し立てる。
「そ…そんな事無いよ…」
「じゃあ、アイツを後ろから蹴飛ばしてみろよ」
ガキ大将らしき児童の発言に、他の児童達が奇声を上げた。
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